change the wold





勉強なんて意味が無い、俺は一人でも生きていける。
だから俺は学校なんかに行かない。
皆と同じ事をやって成功するわけが無い。
だから俺は学校なんかに行かないんだ。

太陽が昇って皆が学校にいる時間も家にいる。
もう親すら何も言わない、そう俺は今この世で一人だ。
人はいくらたくさんいても俺はそいつ等を人と見ないだから俺はこの世で一人……
一人は良い、学校に行っても平凡な授業、その場限りの友人関係楽しいことなど一つも無い。
与えられたレールに乗ってその上を走る人生なんて俺はごめんだ。
俺はそんなレールを乗らないそして俺を今まで馬鹿にしてきたヤツラをバカにしてやる。


いつものようにそんな事を考える、午前2時……
そして後は寝るのが日課のようなモノだが今日は少しだけ違った。
ドン!ドンドン!!!ドンドンドンドンドン!!!
不意に猛烈な勢いでドアが叩かれた。
ガチャ、キー、バタン
無機質な音が部屋を一瞬支配しそしてヤツは入っくる。
何事もないように、それが当然のように……
「コンニチワ」
それがヤツの第一声、いや俺に語りかけた初めの言葉だった
こんばんわの時間にコンニチワと言って入ってきたヤツは俺の見たことのない姿をしている。
「なんだ!?お前」
俺は驚いた。多分今までで一番驚いた。
「ソンナニオドロクナヨ、チャントノックシテハイッタロ」
少し低めで上がり下がり、いやアクセントがついていない声。
そもそも声と言っていいのだろうか、いやこのさい声と言うことにしておく。
そういうことにしておかないと俺には意味がわから無いからだ。

驚いているはずなのに何故こんなに内面は冷静なのだろうか?
わからない、いやわかろうとすること自体ムダな気がする……

「お、おおおお、オマエ誰だよ?」
俺の内面は冷静でも声が凄く震えている。
「オレハ・・・ナンヤッタッケナ?ワカランワ」
いきなり、大阪弁になった。
自分のことがわからないって、コイツ言ったいなんなんだよ?
意味わかんねぇ。
「ジャア、オマエジブンノコト、ワカンノカ?」
あれ?今、俺言葉にしたっけ?
もしかしてコイツ心を読めるのか?
「お前、心よめるのか?」
「ンナワケナイダロ、バカカオマエ?」
「はぁ?オマエなんかに言われたくないわ!自分のこともわかないヤツなんかに!」
「ダカラ、オマエジブンノコト、ワカンノカ?」
「そんな事わかるに・・・」

ちょっと待てよ?俺っていったい何なんだ?
何のために何故ココにいてるんだ?
わからない・・・俺自分のことがわからない。

「オマエ、ナカナカ、カシコイナ」
「はぁ?今さっきオマエ俺のことバカって言ってたじゃないか?」
「ジブンノコト、ワカッテルトイウヤツノホウガ、モットバカダ」
「そうなのか?」
「シラネーヨ」
なんか一瞬コイツが凄くかっこよく見えたけど気のせいだった。
って!俺なんでコイツを受け入れてるんだ!?
「でオマエは何しにきたんだ!?」
「ダカラ、ワカランイウテルヤロ」
「出て行け、すぐ俺の部屋から出て行け」
「イヤダネ」
「はぁ?住居不法侵入罪で訴えるぞ!」
「ココ、オマエノイエチャウヤロ?」
「うっ・・・」
「ジャア、オレネルカラ」
そう言ってヤツは俺の布団に入っていった。
「おい!オマエ何やってんだよ!出て行け!!!」
しかしヤツはすでに寝ていた。
「いったい何なんだよ・・・コイツは」
俺は涙目になりながら状況を理解するのに必死だった

気づけば夜が明けていた。
俺はアレから一睡もしていない。
ヤツは何なんだ。
いきなり部屋に入ってきて俺の布団で寝てる。
しかも物凄くリラックスしているように見える、ソレはもう物凄く・・・
考えれば考えるほどヤツは意味不明だ
そんな事を考え込んでいるうちに夜が明けていた。

「ヨオ、オハヨウ」

いきなり声をかけられたので物凄く驚いた。
「オマエ、さっさとこの部屋からでていけ」
コイツが起きたらまず初めに言おうと思って用意していた言葉だ
「デテイクノハムリヤワ」
「邪魔なんだよ!俺は一人がいいんだ!どっかいけ!」
「ナンカ、ヨウジアッタハズヤカラ、オワッタライワレンデモ、ドッカイクカラ、キニスンナ」

言葉を失うと言うことをはじめて経験した。
コイツには何を言っても通じないような気がする。

そうだ。こう言うやつは相手をしなかったら良いんだ。
昨日は寝てないし早く寝ないとな。

「じゃあ寝るから静かにしてろ」
「オォ、シズカニシトイテヤルワ」

そういうわけでやっとこさ布団に入って眠りにつく。

「ルララルラ」

「オォ!コレナンヤ!?」

「オ!マンガヤ」

「ナカナカオモシロカッタワー」

「ハラヘッタナ」

「メシサガシニイクカ」

「ドカ!オォ!コンナトコロニメシガ、オチテルゾ」

「ナカナカ、ウマイナ」

「フゥー、ゴチソウサマ」

「メシクッタシ、ヒルネスルカ」

「フトン、フトンット」

「オヤスミ」

「オハヨウ、ッテコイツマダネテルナ」

「ナンカテレビデモミルカ」

「ナカナカ、オモロイヤンケ、コノニュースバングミ」

「ヒガクレテキタナ、デンキツケルカ」

「テカヒマダ、テレビモアキタ」

「オマエ、オキロ!」

ゆさゆさ揺らされている。
それはだんだん激しくなりもはや暴力としか呼べないような力で揺らされる。
「オキロ!コノボケガ!オキンカイ!!!」
「いてぇ!起きるからやめろ!!!」
「ワカッタ」
コイツ本当に何するかわからないな・・・
そう思いながら部屋を見渡すと
食べ終わった後の無造作に置かれてる食器、放り投げられているマンガ
そして何故か俺のフトンも床に転がっている。

「オマエ何やってた?」
「マンガヨンデ、メシクッテ、ヒルネシテ、テレビミテ、ヒマダカラオマエヲオコシタ」
コイツ、人の部屋で当然のごとく、くつろぎ部屋を散らかしやがって・・・
「部屋片付けろ!このボケ!!!」
「エェー、メンドクサイカライヤ」
「じゃあ今すぐ出て行け!!!」
「ジャア、カタヅケタラ、ココニイテイインカ?」

やられた・・・まさかコイツに揚げ足を取られるなんて人生最大の失敗かもしれない。

「イテイイノカ?」
「良くない、どちらにしても早く出て行け」
「ソレハムリダッテ」

何度も言うがやっぱりコイツには常識がついようしない。
マジでめちゃくちゃだ。

どうしたら良いかまず考えろ・・・とりあえず部屋を片付けようか。
「おい、俺も手伝ってやるから部屋片付けるぞ」
「ワカッタ」

何で俺が手伝わないといけないんだよと心の中でボヤキながらとりあえず部屋を片付ける。
散らかったマンガを一箇所に集めて、食べ終わった食器は部屋の外に置いた。
それでマンガを本棚に・・・・・・あれ?何で片付けたのに本棚がこんなに空いてるんだ?
もしかしてと思いながらヤツの方を見る。

マンガ読んでやがる・・・・・・

「オイ、オマエなにやってんだ?」
「ミテワカンネーカ、マンガヨンデンダ」

マジで空いた口がふさがらねぇ

「とにかくマンガはオマエが片付けろ1分以内にじゃないと出て行け」
「チィ、ヤレバイインダロヤレバ」

もともとオマエがやったんだろうがと言いたかったがやめておく。
どうせ「シラネー」と言うに決まってるからやめておく方が無難だ。

はぁ〜俺いったい何やってるんだろうか・・・
昨日の夜2時にいきなり現れていきなり俺の布団で寝始めて部屋荒らして・・・
コイツといると苦労した事しか思いださねぇ

「カタヅケオワッタゾ」

やっと終わったか・・・
時計を見たらもう夜の11時、片付けてかれこれ3時間もたってたのか何故か納得できない
それ以前に俺が汚したわけでもないのに部屋を片付けをしている事に腹が立った。
しかしコイツとそれを言い争っても時間の無駄だから言わないでおくことにする。

「おい、オマエ」
「ウン?ナンダ?」
「ここに来る前はドコにいたんだ?」
「ココニクルマエ・・・・・・」
ヤツはしばらく考えてそして
「ワスレタナ」
本気でコイツがわからなかった。
「で、いつでていくんだ?」
率直に言いたいことをぶつけてみる。
「ウーン、ワカランワ」
ここに来た理由は不明、ここに来る前は忘れた、いつ出て行くかわからない。
わからないとか言う言葉で片付けるのが『わからない』と言う言葉に申し訳ないような気がしてきた。
言ってる意味が自分でもわからないがな・・・・・・
「で、オマエは今まで何をやって生きていたんだ?」
ヤツは即答で「ヒミツダ」と言った。
秘密かよ・・・・・・ちょっとムカつく。
「てかオマエなー、勝手に住みついてんだからそれぐらい話してくれてもいいじゃねぇかよ」
「オトコニハ、ヒトツヤフタツノ、ヒミツガ、アッタホウガイインダ」
「まあ、人間、秘密ばかりだしな。」
「ソウダロウナ、デモヒトリグライ、イテモイイジャナイカ?」
「なにが?」
「ホンネデハナセルシンユウダ」
「親友か・・・・・・まあムリだな他人は所詮他人だ」
「ダカラオマエハ、バカナンダナ」
「はぁ?なんでオマエなんかにいわれなきゃいけないんだよ!」
「オマエコドモダナ、ホントノコト、イワレテスグオコル」
「っ!オマエなんかでていけ!」
「オマエガ、デテイケヨ」
「ちっ!でてきってやるよ!このバカ!」

勢いで家を飛び出してみたものの行く所が無い。
てか冷静に考えて何で俺が家を出て行かないといけないだ!?
本当に意味のわからない状況に陥っている。
家に帰ろうかなぁと一瞬思ったがヤツの勝ち誇った顔が目に浮かぶ。
何故か物凄くヤツの勝ち誇った顔を見たくない。
てか俺はあんなヤツに負けたくない
何について負けるのかはわからんが・・・・・・
そんなことを考えながらとりあえず公園にでもいってみる。
ベンチに座り少し考え事。
ヤツのことやら、社会の事、俺の事・・・・・・

「あれ?こいつバカダメじゃん」
いきなり男に笑いながら指を刺された。
こいつは・・・・・・よりによって一番会いたくないやつに会ってしまった。
しまったというのが顔に出ていたのか男はニヤリと笑う。
「お前が学校こねーからストレスたまったぞ〜どうしてくれるんだよ?」
男がそんなことを言ってる間に後ろから5人の男がやってきた。
そいつらは全員、学校のクラスメイト・・・・・・
俺が世界で一番会いたくないグループだ。
「うわーバカダメじゃん、マジ久しぶりにみた」
こいつも笑いながら俺を指差す。
ちなみにバカダメとは俺の学校でのあだ名。
なんでも俺がバカでダメだからこういうあだ名らしい。
頭の悪い胆略思考には困るな。
「オイ、なんかストレスたまるよなぁー」
グループの一人がそんなことを言うと皆にやにやしながら「そうだよなぁー」と言う。
「こんなところにサンドバックぞ」
にやにやしながらベンチに座ってた俺の首根っこを持ち無理やり立たせる。
そして不意に腹へ一発、倒れた俺に蹴りを入れる。
一人が「サッカーしようぜ!」とか言い出し、俺を蹴った。
「うっ!」俺は思わず声を出す。
そうするとやつらはにやにや笑いながらボールは喋るなよ!
と思いっきり腹にけりを入れる。
しばらく蹴られるとまた首根っこをつかまれ無理やり立たされ
そして腹に一発、前に倒れそうになる俺にまた一発。
後ろによろける俺に蹴りいれる。
倒れられず俺は殴られ続けた。

いきなり声が聞こえた。
そうヤツの声が、平坦で声といえるのかわからない声が・・・・・・
「テメェラ?オレノダチニ、ナニヤッテンダ!?エェ!?」
ヤツは男の一人のむなぐらを掴んでいた。
「エェ!?ドウイウコトジャ!?ワレ!?アァ」
ヤツの迫力に男は一瞬、驚いたようだがにやにや笑い出す。
「オイ、みんな、コイツなんか調子のってない?」
「だな」とにやにやしながらさっきまで俺を殴っていたグループがヤツを取り囲む。
「テメエラ、ゼンイン、ビョウインノ、テンジョウノシミデモ、カゾエトケ、ボケガ!」
そういった瞬間、ヤツは男の顔に蹴りを入れる。
6人のうち一人は一瞬のうちに倒れ、他のやつらは一歩さがった。
その隙に倒した男を持ち上げ、別の男に投げつける、
6人中3人は倒れている。
他の三人がいっせいに襲い掛かるがすれ違う瞬間にパンチを一発。
そして回し蹴り。
あっという間に6人は地面に倒れていた。
そしてヤツは俺に手を差し伸べて
「ワルカッタナ、ダイジョウブカ?」
と言ってくれた。
俺は泣きそうになった。
今まで俺がどんなけ殴られようが誰も俺に言葉をかけてくれなかった。
だれも俺を相手にしなかった。
でもコイツは・・・・・・

俺は起き上がるが脚がいうことをきかず倒れそうになる。
ヤツは俺をおんぶしてくれた。
そしてもう一度「ワルカッタナ」と言う。
「なんでお前が謝るんだよ?」
気になって俺は尋ねてみたすると
「タスケニイクノガ、オソクナッテダ」
「てか何で助けてくれたんだよ?」
「ナニイッテンダオマエ、オレタチ、トモダチダロ?」
はぁ?俺はいつからコイツの友達になったんだよ。
マジ意味がわからない。
でも嬉しかった

気づいた時はベットの上で寝ていた。
頬を触ってみたら絆創膏が張ってある。
どうやら傷の手当てはしてくれたみたいだ。
体のあちこちが痛い。
でも殴られるのにはもう慣れている。
思わずため息をつく。
「オ?オキタノカ?」
ヤツはいきなり話しかけてくる。
「あぁ、起きたよ」
「オマエ、ケンカヨワイナ?」
なんでコイツは朝っぱらからこんなに嫌味なんだ!?
まあ朝っぱらといったが時計を見たところ時間は11時だけどな。
「オマエ、イジメラレッコカ?」
痛いところを的確についてくる・・・・・・
昨日、あんなところを見られているし嘘ついても仕方が無いよな。
「あぁ、いじめられてる」
「フーン、ソウナンカ」
ヤツは何事も無かったように流し別の質問を投げかける。
「ソウイエバオマエ、ナンデガッコウイカナインダ?」
「学校なんて行く意味無いだろ?」
「アァ、スマン、オマエバカダッンダッケ?」
やっぱりコイツは最低だ。
「学校は・・・・・・やっぱりやめた」
「ドウシテダ?」
「なんでオマエに語らなきゃいけないんだと思ってな」
「オレタチ、トモダチダロ」
友達か・・・・・・久しぶりにそんな存在ができた気がする。
初めて会ったときは変なやつとしか思えなかったけど
ヤツは俺を助けてくれた。
いじめっこからそして俺に友達だろとさも当たり前のように言ってくれた。
正直、これはかなりおかしな友達のなり方だと思うけど
友達のなり方に条件はないんだと思う。
ただお互いがお互いを友達だと思えばその日から友達なんだ。
だから俺もヤツを認める、友達として。
「そうだな、俺たち友達だな」
「ナラオシエロヨ」
「時期がきたらな」
そういうとヤツは黙った。
それはヤツの精一杯の思いやりだという事を俺はもう少し後になって知ることになる。

それから俺とヤツの奇妙な生活がはじまった。

「ナァ、ソトニ、アソビニイカナイカ?」
ヤツはいつもいきなり言ってきた。
俺は即答した。
「外にはでたくない」
「デモ、オレハソトデアソビテェ」
「俺は行きたくねぇ」
俺は否定するとヤツは
「イコーゼ、イコーゼ、イコーゼ」
ねだりだす、まるで子供のように。
「イコーゼ、イコーゼ、イコーゼ」
ひたすらねだる。
それに俺は耐えられなくなった。
「あぁ!もううるさい!」
「ジャア、ダマッタライクノカ?」
またコイツに揚げ足を取られた。
ここからはお互い意地の張り合いだ。
「ジャア、マンガデモヨンデルワ」
あれ?もう諦めたのか、と思ったがそんなはずはなかった。
みるみるうちに本棚の漫画を全部読み終える。
10分しか経ってない。正直ありえない早さだ。
てか絶対真面目に読んでないぞコイツ。
そのあと、ベットの布団を床に下ろして寝だす。
1分もしないうちに起き上がる。
その頃にはもう部屋はぐちゃぐちゃだった。
どうやらいくまで俺の部屋を散らかすつもりのようだ。
そして昨日の片付けのことを思い出したら俺の意志はあっというまに崩れ去った。
「わかった、行くからそれ以上部屋を汚すな!」
「イエーイ、マジサイコー」
そういい部屋を出て行った。
ヤツはかなり調子のイイヤツに変貌しているようだ。
渋々服を着替え部屋を出る。
階段を降りて玄関で靴を履き替え家を出る。
外はまぶしいぐらいの晴天だった。
理科用語だと快晴らしいがまあどうでもいいことだ。
正直、久々の外で太陽の光が厳しいがまあそのうちなれるだろう。
ヤツは既に玄関先の道で待っていた。
「なあどこ行くんだ?」
気になったので聞いてみた。
「ボーリングヤラ、カラオケヤラ、ゲーセンヤラ、イコウカ?」
「まあ別になんでもいいよ」
「ジャアツイテコイヨー」
すごすごとヤツの後をついていく。
実を言うと、ボーリングとかカラオケとか行ったことが無いんだよなぁ。
ゲーセンには昔行ったことがあるけど。
目的地に向かうまでに住宅街を通り商店街を抜け駅前に着く。
途中と通った商店街は昔と少しも変わっていなかった。
その事にかすかな安心感を覚える。
そんなこんなをしているうちに目的地についた。
「ココダヨ、ココ」
と指を刺すがそんなことされないでもわかる。
でも中に入るのを少し躊躇してしまう。
ゆっぱり初めていくところは少なからず不安だ。
そんな俺を尻目にヤツはズカズカと入っていく。
俺は急いで後をついていった。
ボーリング場に入ると色々な音がする。
ボールが転がる音、ボールが落ちる音、ピンが倒れる音・・・・・・
様々な音が混じりあう不思議な感じだった。
「オーイ、オマエクツノサイズ、ナンセンチ?」
靴のサイズ?何に使うのだろうか。
疑問に思いながらも答える。
そうするとヤツは自販機みたいなのにお金を入れ靴を取り出す。
「ホラヨ」
靴を差し出される。
これ、何に使うのだろうか?
「トリアエズ、ハキカエロ」
言われたとおり履き替える。
「ジャアコッチダカラツイテコイー」
とりあえずついていく。
そのさい、適当にボールを選んで持っていった。
それを変なところに置きボーリングが始まる。
「ジャアイクゾー」
ヤツが走って豪快に投げる。
投げるといっても当然下投げだが。
ボールが溝に勢いよく落ちた。
「ウワァー、ヤッチマッタァ」
TV画面みたいなところにガーターorzと表示されている。
「なぁ?ガーターってなに?」
「ソウイエバ、ショシンシャダッタナ、オマエ」
ヤツは丁寧に五分ぐらい説明をしてくれた。
一回で二度投げるという事、ピンを全部倒すとストライク(コレは知ってた)
2回目で倒すとスペア、溝に落とすとガーターといって0点。
倒したピンを競うゲームということらしい。
意外と簡単そうだと思ったがボールがまっすぐいかずガーターの連発。
ヤツも似たような感じだった。
というわけでゲームを終わり次に行く事に。
「ジャアカラオケ、イクゾー」
すたすたとついていく。
どうやら同じ施設にボーリング場とカラオケがあってさっさと受付をすませ部屋に入った。
「ジャー、サキウタエ」
そういわれ辞書みたいなものを渡された。
「コレ何?」
「オマエ、カラオケモハジメテカヨ」
てな感じでボーリングの時のように丁寧に教えてもらった。
この辞書みたいなヤツには曲とその番号が書いてあって
その番号をTVのリモコンみたいなヤツで送信して曲が始まる。
意外と簡単な手順だった。
そして二人でひたすら歌った。

「ウォー、ウタイキッタナァ」
「なかなか、楽しかったな」
「ソウダナー、ジャアゲーセンデモイクカ」
「イクカー」
というわけでゲーセンへGO!
コレも同じ施設にあった。
この施設、ボーリング場、カラオケ、ゲーセンとかなり色々ある。
こういう施設になれてない俺としてはかなり驚きだ。
ヤツの後を歩いているとゲーセンにたどり着いた。
「ジャア、ショウブダ!」
ヤツは強制的に勝負を仕掛けてきた。
しかたないのでやってみる事に。

勝負スタート
俺は剣士でヤツはドクターだ。

「いざ、勝負」
「アヒャヒャヒャヒャ」

なんかこのドクター頭逝ってるな・・・・・・

剣士がドクターに刀で攻撃を仕掛ける。
ドクターはその刀をジャンブでよけ、上空からメスを降らす。
そのメスをガードで耐え、落ちたところにコンボを仕掛ける。
上から斬り、下から斬る。
ドクターは何とかその攻撃に耐え、剣士と距離を置く。
距離を置いたところからメス投げ攻撃。
ドクターのメスが襲い掛かるが剣士はガードで耐える。
剣士は反撃で刀で真空刃をつくりそれを飛ばす。
ドクターはジャンプで避け、ソコから必殺技
メス・ユー・メス!!!
大量のメスが剣士に襲い掛かる。
ガードがはじかれ剣士にダメージだが何とか剣士は耐え切り猛ダッシュで間合いを詰める。
そしてそこから必殺技。
斬鉄剣!ドクターは倒れた。

「おぉ!勝ったぞ!」
適当にコマンドを入れたら何故か勝利した。
これぞビギナーズラック、初心者クオリティ。
「チクショー、スゴクハラタツナァ」
「初心者の俺に負けるとかオマエ弱いな」
「マジムカツク、コンドハアレデショウブダ!」
「受けてたつぜ!」
調子に乗って俺たちはいろんなゲームをやった。
カーレース、UFOキャッチャー等いろいろだ。
勝負は結局五分五分ぐらいで引き分けというコトで落ち着いた。
「ジャアカエルカ?」
「そうだな、帰ろうか」
いろんな事をやって家路につく。
空は一面、夕焼け色だった。
久々に俺は夕焼けを見る。
なんだかどこか懐かしい感じがしてきた。
俺たちはお互い自然と歩幅を縮め並んで沈む夕日を見ながら帰っている。
「ナァ?キョウオモシロカッタカ?」
「まあ面白かったな、また行きたい」
「ソウカ、ソレハヨカッタ」
「オマエが人のこと考えるとか珍しいな」
「ダマレ、オレハツネニ、イロンナコトヲ、カンガエテルンダ」
「ふ〜ん」
「オマエ、イマバカニシタダロ!?」
「べつに〜」

家に着いた頃にはもうお互いの壁はなくなっていた。
そして、その日の晩、俺が外に出たことを泣いて喜んでいた母さんをみた。
それはヤツと一緒に家に帰って階段を登る時だった。
ふ、とリビングに目をやると両親が話していた。
何を話しているのか気になった俺は聞き耳を立てて聞いてみた。
その内容は俺がやっと外に出てくれた。
とか
学校に行ってくれるようになるとかそう言う期待をしながら
泣きながら喜んでいた母さんの姿だった。
角度的に父さんの顔は見えないが、鼻をすする音が時々聞こえた。
その時俺は始めて自覚した。
俺ってなんてダメな人間なんだろう―――と

その日の夜は眠れなかった。
それは決して隣でヤツがいびきをかいて寝ているからではないと思う。
まあ少しはその可能性があったかもしれないが・・・・・・
そして俺はその晩に気づいてしまった。
与えられたレールに乗っていく人生が嫌なのではなく。
与えられたレールにすら乗れていないという事を。
勉強に意味が無い訳ではないなく。
勉強の意味に全く気づいていない事を。
何もできない自分に気づいてしまった。
当たり前の事すらできていない自分に。
そして・・・・・・
俺が人と見なかった人間は俺を人として見ていなかったという事を。
でもそんなバカでどうしようもない俺を見続けてくれた親という存在。
太陽が昇り始めた頃、俺は一つの決心をした。
学校に行こう、与えられたレールにもう一度乗ろうという事を。
「アレ、オマエ、モウオキテタノカ?」
「いや、今日は寝てない。」
「デ、コタエハデタノカ?」
ヤツは俺が何を考えていたのかわかったように真剣な顔つきでそういった。
「あぁ、今日から学校行くよ」
「ヨカッタナ、トイッテヤリタインダガ、オマエ、イジメラレッコダロ」
あ・・・・・・そうだったんだ。
いくら俺が決心して変わっても周りの環境までは変わらない。
そんな初歩的なことを忘れていた。
せっかくの決心が鈍り始める。
それを察したようにヤツは
「ジブンノミグライ、マモレルヨウニシテヤルヨ、ツイテコイ」
そういい外に出る。
俺も慌てて服を着替え、ヤツを追いかける。
玄関から外に出ると薄っすらと明るかった。
「ツイテコイヨ!?」
ヤツはそういい走っていった。
ついてこいという事なので俺も走って追いかける。
しばらく走るとゼェハァと息が乱れた。
走るのなんて久しぶりでかなりきつい。
というか死ぬ。
そんなことを思いながらひたすら走る。
走る、走る、走る、走る。
やっとたどり着いたのは公園だった。
この前、俺がボコボコにされた所。
てか何故あんなに遠回りしてこんなところに・・・・・・
「ジュンビウンドウハ、オワリダナ」
「いった・・・・・なに・・・・・・するんだよ」
息が乱れていてうまく話せない。
「カクトウギヲオシエテヤル」
「え?」
「ジブンノミハ、ジブンデマモレ、ジャアイクゾ」
そう言うヤツは回し蹴りをした。
「ハイ、ヤッテミロ」
「ちょ、そんなのムリだって」
「イイカラミヨウミマネデヤッテミロ」
とりあえず、見様見真似でやってみた。
「ジャア、ソレヒャッカイナー」
反抗しても無駄なのが感覚的に理解したので100回やってみる事にする。
やっていると明確にわかるんだが何故か俺の蹴りはスピードが出ない。
筋肉の差だと思えば当たり前なのだが、何か根本的なところで違う気がする。
わからないがとりあえず100回やりきった。
「100回、やりきったぞ」
「ジャア、ソロソロ、オシエテヤルヨ」
そういいヤツは俺の方に来て、「イッカイヤッテミロ」と言うのでやって見た。
「ダメダメダナ」
「俺もおかしい事はわかってるんだけど何がおかしいのかわからないんだ」
「マズ、ジクアシノヒダリアシヲ、フンバレ」
言われたとおりに左足を踏ん張る。
「ンデ、ツギハコシノカイテンヲイシキシロ」
ヤツは目の前でゆっくり回し蹴りを腰の回転のやり方を教えてくれた。
「ジャア、ヤッテミテ?」
「おう!」
左足を踏ん張って、腰の回転を意識する。
そして思いっきり右足を蹴り上げる。
空気を切る音がさっきと変わった。
さっきまでは頼りない音だったのだが、今の鋭くなっている。
「ケリノ、スピードガアガッタハズダカラ、ソノオトヲレンゾクジュッカイヤッテミロ」
そういわれやってみる。
一回・・・・・・二回・・・・・・三回
あれ?音がさっきみたいに戻った。
「イマ、コシガハイッテナカッタゾー」
どうやら連続でやっている間に腰の回転が疎かになっていたようだ。
腰に注意し、もう一度。
一回・・・・・・二回・・・・・・三回
また音が戻った。
「イマノハ、ジクアシガフンバレテナカッタゾ」
そうか、腰に意識が行き過ぎて足に注意がいかなかった。
そんなことを繰り返していく。
何度も失敗し、体力も最早限界。
走った時点で体は悲鳴をあげていたのに回し蹴りの練習でもう限界は近い。
でも諦めなかった。
ここで諦めたら全てが元に戻るような気がしたから。

7・・・・・・8・・・・・・9・・・・・・10!!!

やった!十回できたぞ!
もう、喋る体力も残っていない。
そして俺はその場で倒れた。

気づいた時にはまたベットで寝ていた。
全身が痛い、どうやら筋肉痛みたいだ。
「オ?メガサメタカ」
「うん、てか体が痛すぎ」
「ソレハ、ウンドウシテナイノニ、キュウニカラダヲウゴカスカラダ」
「んなのわかってるわ」
「ジャア、ストレッチデモスルンダナ」
ストレッチ・・・・・・起き上がるだけでも痛いのにできるのか?
なんか物凄くムリな気がする。
「ジャア、ジョウハンシンダケオコセー」
「もうおこしてる」
「ンナコトシッエルワ」
そういいヤツは俺の背後に回り思いっきり背中を押す。
「いたい!いたい!マジムリ!ギブギブ!!!」
脚に激痛が走った。
筋肉痛のせいもあるだろうけど、とにかくイタイ。
でもヤツはいっこうにとめる気配がない。
「ちょ!ムリ、ギブだって!」
「ウーン、アトサンジュウビョウナー」
イタイタイイタイ!マジムリ、死ぬー!!!!
と叫びながら30秒がたった。
「死ぬかと思った」
「ジャアツギイクゾー」
「ちょ!ムリだって!」
そんな俺の意志を無視してドンドン始まって言った。

一時間近くストレッチをさせられて数回天国を見た気がする。
「カラダカルクナッタダロ?」
言われてみればそんな気がしなくも無いな。
安心したらいきなり腹が減った。
「ハラヘッテンダロ、メシクイニケヨ、シタニ」
「そうだな・・・・・・母さんに謝りたいしな」
「ソウシトケ」
決心はついたがやはり不安がよぎる。


それからしばらくの時間が経った。
一緒に遊んだり、朝まで語り明かしたり、武術の真似事を教えてもらったり
イロイロな事を五日間であった。

そしてヤツは五日目の夜にいきなり切り出す。
「オレ、イエデルワ」と
「はぁ?どうしてだよ!?」
おれは意味もわからずそう叫んだ。
「ヤルコトヲ、オモイダシタ」
「なんだよ!それは!?」
「オレニトッテダイジナコトヤ」
大事な事
俺にヤツを止める手立ては無かった。
出会いがあれば別れもある。
こんな事は初めからわかっていたはずだ。
でもあまりにも早く、あまりにも唐突すぎる。
だけど、俺は・・・・・・
「エキマデ、ツイテキテクレナイカ?」
ヤツはそう言い出した。
もちろん俺に断る理由もない。

途中色々な思い出話をした
といってもたった五日間の話だけど。

時間も時間なだけに最終列車だった。
駅員さんの了承を得て特別にホームで見送ことになった。
「なぁ、やっぱり行かないでくれよ!オマエがいないと、俺は・・・・・・」
ヤツは微笑みながら
「ナニイッテンダヨ、オマエハ、モウヒトリデダイジョウブダロ」
「大丈夫じゃねぇよ!?」
「ソレニ、マエヒトリデイキテイケルッテイッテタダロ?」
「ムリだよ!一人でなんて!俺は一人でなんか生きていけないよ!!!」
「ソレガワカッテルナラ、オマエハダイジョウブダヨ」
「でも一人は嫌だ!」
「ナニイッテンダ、カゾクガイルダロ?」
「でも!でも!」
「オレハイカナキャイケナインダ」

しばらく無言が続く。

そしてついに列車が来る。
けたたましいベルの音の中ヤツはこう言った。
「ホラ、コレヤルカラ」
そしてポケットからゼンマイを取りだし俺に渡す。
「タイセツナモノダカラ、ナクスナヨ」
俺はゼンマイを受け取る。
そのゼンマイはずっしり重く、紐がついていて首からかけられるようになっている。
「マタ、モドッテクルカラ、ソレツケテマッテロ」
俺は声も出せずうなずき、そのゼンマイを首からかける。
そしてヤツは列車に乗り込む。
「ジャアナ」

列車のとはしまり、発車した。
俺は何時までもホームにたっていた・・・・・・


ヤツと分かれてから一夜がたった。
7時にあわせた目覚まし時計が鳴り響く。
なんとか半分寝た状態で目覚ましをきり、ゆっくり目を覚ましていく。
目が覚めたので台所に向かう。
かあさんはビックリして朝ごはんを作り出す。
無理も無いか、今まで部屋に引篭もってたんだしな。
そしてかあさんにいう「俺今日から学校行く」
それを聞いたかあさんはその場で泣き出した。
俺はかあさんに今までのことを謝り、家をでる。
すがすがしいほどの太陽、雲ひとつ無い晴天。
制服を着て、首にはゼンマイをかけている。
ヤツに教えてもらった様々な事を思い出す
そして張り切って学校に向かった。







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